この法律はどんなことを定めているの?
この法律は、船の事故で人や財産に損害が出たとき、船の所有者や運航者が責任を負う金額に上限を設けるルールを定めています。
事故が大きくても、一定の条件のもとで「ここまでしか賠償しなくてよい」とする制度で、船主責任制限(LLMC:Limited Liability of Maritime Claims)と呼ばれる考え方です。
この法律がないとどうなる?
船の事故で莫大な損害が出た場合、船の所有者がすべての賠償責任を負うと、運航が続けられなくなってしまう可能性があります。
- 過失が小さくても、賠償金が巨額になり倒産する恐れがある
- 海運業が不安定になり、社会的な物流が混乱する
この法律は、海運の安定と損害賠償のバランスをとるために存在します。
この法律を守らなかったら?
船主が責任を制限したいときは「責任制限手続」を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
これをせずに損害賠償に応じなければ、本来の制限のメリットを失い、全額の賠償責任を負うおそれがあります。
たとえばこんな場面(一般的な事例)
- 貨物船が衝突事故を起こして他の船を沈めてしまった → 被害者への損害賠償の上限を制限できる
- 油が流出し、漁業に大きな影響が出た → ある範囲までの賠償で済む可能性がある
この法律の主なルール
責任制限の対象となる人(第1条)
次のような人が責任制限を受けられます:
- 船舶の所有者
- 用船者(チャーター)
- 船長・乗組員など
事故が「航行に関するもの」であり、故意や重過失がなければ制限が適用されます。
責任の上限金額(第5条〜)
賠償金の上限は、船のトン数や事故の内容に応じて段階的に定められています。
- 人命に関する損害と、それ以外(物損など)で別々に上限がある
- たとえば、500トン以下の船では数千万円程度の制限がある
責任制限手続とは?(第6条〜)
責任制限を使いたいときは、船舶の所在地の地方裁判所に「責任制限手続開始の申立て」をします。
制限額に相当するお金または担保を裁判所に供託し、その範囲で債権者に公平に弁済されます。
故意・重過失があると制限できない(第1条ただし書)
船主や船員に故意や重大な過失があった場合は、責任制限は適用されません。
つまり、悪質なミスやわざと事故を起こした場合には、全額の賠償義務が発生します。
用語の補足
- 責任制限:賠償責任の上限を法律で制限する制度
- 船主責任制限手続:裁判所で責任制限を認めてもらうための申立て
- トン数:船の大きさを表す単位(トンで計算)
- 重過失:非常に重大な注意不足
注意点
このページは、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の内容をやさしく紹介するもので、教育・啓発を目的としています。
内容は一般的な情報に基づいており、すべての状況にあてはまるとは限りません。
具体的な判断が必要な場合は、弁護士や専門機関へご相談ください。
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